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最高裁判所第一小法廷 昭和32年(あ)2199号 決定 1958年5月24日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人松原正交の上告趣意第一点は、憲法三一条違反をいうけれども、その実質は、単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、本件のような場合には、被告会社に対し、たばこ専売法七七条、七一条の罰金のほかに、没収、追徴をも言い渡し得るものであることは、同法七五条、刑法八条、九条、二〇条の各規定の趣旨に徴し疑いのないところであるから、所論は採用できない。

同第二点は、単なる訴訟法違反の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(なお、略式命令の請求による起訴の効力は、その請求が裁判所に対してなされた時に発生し、略式命令の謄本が被告人に送達された時に生ずるものではないと解するのが相当である。従って、昭和三一年七月一〇日なされた本件略式命令の請求が所論同年同月一三日の清算結了登記前になされたこと記録上明らかな本件では、略式命令の謄本の送達が清算結了登記後になされたからといって、起訴の効力に消長のあるべきいわれはない。そして、原判決説示のごとく、被告会社は昭和三一年六月三〇日清算を結了する旨の手続をしたのであるがその結了手続をなす約二〇日以前である同年同月一一日被告会社代表者木村喜多は検察官事務取扱副検事から本件につき略式手続によることにつき異議がないかどうかを確められ異議がない旨申述をしたことも記録上明白であるから、清算人木村喜多において本件のような解散前の違反行為に対する事件の結末を見るに至るまで、被告会社の清算は結了せず、従って、被告会社はなお存続するものと解すべきことは、昭和二九年(あ)一九二二号、同年一一月一八日小法廷決定、集八巻一一号一八五〇頁以下に判示されているとおりである。それゆえ、本件は公訴棄却をすべき場合に当らず、所論は採ることができない。)。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫)

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